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すずめの戸締まり 感想

観てきた感想備忘録。
震災をモチーフにした「君の名は」、「天気の子」に続く三作目。
集大成という触れ込みですが震災をモチーフとした監督作品としては一番良かったと個人的には思いました。面白かったです。ただ君の名はみたいな感じの作品を観たい人にとってはちょっと重めに感じるかもです。

以下ネタバレあり感想です。


今作は改めて説明するまでもないですが東日本大震災をモチーフにした作品です。
3.11とは言ってはいないですが、東北の災害から12年後の世界を描いているため東日本大震災後を描いた作品と言って差し支えないかなと思います。
10年経ったから描いて良いということを監督は思っていないですし、震災をモチーフにすることを特別視するわけでもなく、震災をモチーフにしたエンタメ作品の一つであると話をしています。

www.famitsu.com

 

まず作品の感想ですが、東日本大震災を扱うということもあってものすごい気を使ってるなと思いました。緊急地震速報を模した音が流れる旨の注意事項もそうですが劇場の入場特典として配られた新海誠本(薄い本)がもはや劇場で販売するパンフレットレベル、というかパンフレットと中身が少し重複してるぐらいのレベルのものが配布されています。中身は今作がどういう企画意図でどういう想いで作られたのかが数ページに渡って書かれています。もちろん作品を実際に観て感じたものが全てだとは思いますが、決して簡単に扱って良い題材ではないということをわかった上で作った作品であるということを知ってもらうために配ったんだろうなと感じました。

実際鑑賞しての感想ですが前向きになれるいい映画でした。戸締りというのは自分の気持ちに整理をつけるという感じなのかなと思いました。たとえるなら卒業式のような感じでしょうか。
今作は場所を悼む(いたむ)物語で、棄てられた土地・場所をテーマとして描かれています。監督は田舎の実家に帰省した際にそれを強く感じたと話をしていますが、私自身もコロナ禍でちょくちょく行っていたお店や昔からあったお店が閉店する姿を見て諸行無常を感じていました。「雨を告げる漂流団地」でも似たようなテーマを扱っていたため様々な行事が出来なくなった今の世の中ではこういった悼む行為が必要なのかもしれませんね。
恋愛要素はなくしたわけではないと監督は話しをしていましたが、実際道中はほぼ椅子とのロードムービーのため相方は異性でなくても成立した物語かなと感じました。ただ異性かつ椅子という設定のもとで女子高生に座られる、踏み台にされるというとんでもないフェチシズムが繰り出されて普通の恋愛要素よりもドキドキするシーンが出てきて困惑しましたw

――女性に座られたり、踏まれたり、あれは監督のフェチシズムではないんですか?
新海 違いますよ(笑)。憧れる他者というのは人生で一番巨大な秘密ですよね。鈴芽にとってそれが草太で、その秘密に対して物理的に近づきたい、触れたいと思うのは普遍的なドキドキじゃないですか。 それを今の時代に合ったかたちで表現しようとしたらああなったんです。だからあのシーンで思春期の人にドキッとしてもらえたら僕としてはうれしいです。
引用:

新海 誠、新作を語る。「『君の名は。』でも 描けなかったものをやるんだと、覚悟を決めて『すずめの戸締まり』を製作しました」(週プレNEWS) - Yahoo!ニュース

 

冒頭のダイジンを追いかけて船に乗るシーンまでの劇伴良かったですね。気持ちがめちゃめちゃ盛り上がりました。
草太役の松村北斗さんの演技も良かったです。ちょいちょい宮野真守さんっぽさを感じてました。
この映画の一番好きなシーンを挙げるとすると叔母の環と鈴芽がSAで喧嘩した後に自転車に乗りながら仲直りするシーンがとても好きです。喧嘩の中で環が鈴芽に対して「婚活がうまくいかない原因は鈴芽にある。私の12年を返して」と言ってしまうのですが、その後「そう思ったこともあったけど、それだけじゃないのよ」と環が鈴芽に言うのですが、さっき言ったことは否定せずだけど多くは語らずとも伝わっている感じが12年間の二人の関係性を如実に感じられてとてもほっこりしました。

災害をモチーフにした作品の集大成ということでしたが、たしかにこの作品が一つ到達点という感じがします。なんとなくですがもし監督が次回作を作るとなると取り扱うテーマをガラッと変えてきそうな気がします。とても良い作品でした。

 

 



余談:
今作は東日本大震災を取り扱った作品なので、ネット上の感想で震災の当日の思い出を語っていた人をいくつか見ました。私は東京に住んでいたのでその日は実家で親が大相撲をテレビで見ている横でなにするでもなくぼーっとしていました。テレビから緊急地震速報が流れて警戒していたら今までに経験したことのない大きな揺れがきたので家のドアを慌てて開けて揺れが収まるのを待っていました。当時住んでいたマンションの共用部のガラスが割れた音が聞こえてきたのがとても印象に残っています。テレビで被災地の映像が流れてきて津波から逃げている軽自動車が津波に飲まれた映像をみて目の前に流れた映像が現実のものとして受け入れられなかったのを今でも覚えています。
2年ほど前、仕事で被災地の宮城県に行った時車で街を走っていると地域によってとてもキレイだけど何もない場所があり復興が進んでるという思いと人がいない事を感じてしまって少し切ない気持ちになりました。
10年の折で被災者の方が思いを語られている映像がたくさん公開されていたので共有しておきます。

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